ある幻想画家の手記

絵画、芸術について思いついたことを書き記してます。画廊はこちら『第三都市幻想画家 福本晋一 ウェブサイト』 http://www7b.biglobe.ne.jp/~fukusin/ 歴史・事件論の『たまきちの「真実とは私だ」』もやってます。https://gensougaka.hateblo.jp/ メールはshufuku@kvp.biglobe.ne.jpです。

ちばあきお小論 全国大会を避け続けた『キャプテン』と『プレイボール』

最近漫画をよく読む。しかし最近のマンガは読まない。自分が子供の時に読んでた漫画をまた読むのだ。これは、新しいマンガは時代感性的にあわない、というより、単に私が大人になったために漫画自体を純粋に楽しむことができなくなったからだろう。漫画は子…

パンツァーリート(戦車の歌)を日本語で歌ってみよう!

映画「バルジ大作戦」のオープニングでドイツ兵が歌うドイツ軍歌「パンツァーリート(戦車の歌)」を歌えるように和訳してみました。この曲は脚韻の部分の止めが特徴的なので日本語でもそこを生かして訳しました。ただし1番だけ。「バルジ大作戦」でもここを…

神戸人は「北・南」を「山側・海側」なんて言わない

神戸人は、北と南のことを「山側」「海側」と呼ぶと紹介されるのをたまに目にする。ウソである。元町大丸百貨店内のエスカレータ表示がそうなっているのが面白いから広まっただけだろう。 では、どういうのかというと、北、山側とは言わず「上」、南、海側と…

三島由紀夫と岡田有希子~共通するその衝撃の死と内面

精神分析学者の岸田秀の「三島由紀夫論」にこういう文章がある。 「三島由紀夫の精神ははじめから死んでいた。(中略)彼は、死の最後の瞬間まで、自分が本当に何を欲しているか、どう感じているかをつかんでいなかったであろう。それはつかむべくもなかった…

あの時もあの場所も過ぎ去った

きのうは、久しぶりに、むかし勤めていた会社の前まで行ってみた。近くに用事があったついでだったが。 少し、なつかしさという感興をもよおすことができるかなと思ったのだが、実は私は、むかし居た場所に行っても、なつかしいという気持ちなど起こらないこ…

『千と千尋の神隠し』は『じゃりン子チエ』へのオマージュ!?

宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』(2001年)は、高畑勲監督の『じゃりン子チエ』(1981年)のオマージュ作品なのだと思う。両親を失い(本当はどちらも失ったわけではないけど)、まだ小学生である主人公の少女が働かざるをえない宿命となり、いろんな怪物…

10年ぶりの自画像

私はあまり自画像は描きませんが、前描いたのがちょうど10年前の2012年だったので、ちょうど区切りもいいので描いてみました。自画像描いたら描いたでまた自分のこと何か分かるかもしれないとも思いまして。まず10年前、2012年の自画像から。 自画像 27.2×22…

レオナルド vs ミケランジェロ どちらが勝ったと言えるのか

レオナルド・ダ・ヴィンチの『アンギアーリの戦い』と、ミケランジェロの『カッシーナの戦い』は、フィレンツェの同じ宮殿の同じ部屋に、同時に描かれるはずの壁画であったが、両者とも作品は残っておらず、多くの詳細がいまだ謎のままである。その謎の中で…

フェルメール『絵画芸術』を模写してみました

あのダリが、世界が終るとしてただ一つ救える絵画があるとしたらどれを選ぶかとの問いに即答してあげ、描いた画家自身も終生手元に置いていたフェルメールの『アトリエ(絵画芸術)』を模写しました。 フェルメール『アトリエ(絵画芸術)』模写 72.7×60.6㎝…

画集『福本晋一 遠い街』発売中です

画集作ってみました。 (この画集はヤフオクで出品しています→こちら) 苦労したのは、作品選び。いちおう、作品集としてまとまりが必要かなということで『遠い街』というテーマというか、コピーつくってそれを基に掲載する作品を選んでみたのですが、このテ…

レンブラント『ユダヤの花嫁』を模写してみました

レンブラントの最高傑作という声もある『ユダヤの花嫁』と『読書するティトゥス』を模写しました。 欧米で古典絵画の美術館を巡っていて、同じような絵ばかりにあくびが出始めたとき、突然ハッとさせられる絵に出会う、と、それはたいていレンブラントの絵で…

個性・スタイルはどうすればできるか

最近つくづく思うのは、当たり前のことかもしれませんが、「今の自分以上の作品は描けない」ということです。エンターテインメントの作品なら別かもしれませんが。 「今の自分」というのは、今の自分の「状況、環境、感情、こだわり、才能、体力などなど」す…

ホテル・カリフォルニアを日本語訳で歌ってみよう!

ポーの「鴉」の訳に続いて、イーグルスの名曲『ホテル・カリフォルニア』の歌詞を日本語訳してみました。しかもちゃんと歌えるように! しかしこの歌はポーの「鴉」に似てますね。特にオチ。 ホテル・カリフォルニア Hotel California by イーグルス 昏い荒…

絵画にタイトルなどいらん

新作を描くたびに、私はタイトルに悩みます。私はどうも自分で思うに 絵画にタイトルなんかいらん と考えているところがあるようです。谷内六郎さんの絵のようにタイトルと絵でひとつの作品なんて例外はありますけど。 音楽なんかもいわゆる純粋芸術の音楽な…

横溝正史『真珠郎』のモデルとなったモダンボーイ

私は特に横溝正史ファンなわけではありませんが、『横溝正史読本』という横溝のインタビュー本は大好きで、今でも読み返します。その中で今回読み直して気づいたことがあるので書いておきます。 今回読んで目にとまったのは、横溝さんがやたら青年期の探偵作…

芸術家に必要なものは感性より虚無

芸術家に一番必要なものは何か? それは、 欠損の感覚だと思う。『虚無』と言いかえてもいいかもしれない。 多くの人は芸術家に一番必要なものは「豊かな感性」というかもしれない。確かに『感性』は必要だ。しかし『感性』など早い話、誰でも持っているので…

『福本晋一展』やっていただいてます in 西脇市岡之山美術館

2017年の8月7日から8月26日まで、西脇市『日本へそ公園前』駅のまん前にある西脇市岡之山美術館にて、『福本晋一展』を開催してもらっております。もちろん初の個展。とてもうれしいです。関係者の皆様ありがとうございます。 出品は油絵ばかりで25作、う…

ベートーヴェンの「最高傑作」弦楽四重奏曲第14番の秘密

ベートーヴェンの最晩年の作品、弦楽四重奏曲第14番嬰ハ短調は、ベートーヴェン自身「最高傑作」と言ったという。実際、古参のベートーヴェンファンにはこの曲を「最高傑作」と思っている人は多いようだ。その一方で、「いまだ良さが分からない」というベテ…

フランク・ロイド・ライトのジョンソン・ワックス社ビルと仏教建築

フランク・ロイド・ライトの建築が日本建築の形態の影響を受けていることは誰もが知るところである。ロビー邸は平等院鳳凰堂(下図)だし、ユニティ教会や、ジョンソン・ワックス社の全体プランは、日光東照宮の本殿と拝殿を『呂』の字型につなぐプランを踏…

レオナルド・ダ・ヴィンチ 本当の自画像

これはあまりに有名なレオナルド・ダ・ヴィンチの顔ですが、実はこのレオナルドが描いたオッサン、いやデッサンが本当にレオナルドの自画像なのか証拠は何もない。「わしの顔」なんてどこにも書いていないのだ。いかにも偉人の肖像にふさわしいということで…

芥川龍之介『歯車』におけるレエン・コオトの正体

ちょっと芥川龍之介の遺作小説『歯車』を読んでて気がついたことがあるので書き記しておきます。多分、今までどの文学者も指摘してないことだと思うのですが、どうか。 この小説は好きで何度も読んでいる。芥川を自殺に追い込んだいろいろな妄想が描かれてい…

エドガー・アラン・ポー「鴉」を訳してみました

エドガー・アラン・ポーの代表作の詩 「カラス(The Raven)」を訳してみました。Ravenはcrowのカラスではなくワタリガラスのことらしいですが、かえって分かりにくくなるのでやはり「カラス」にしました。ポーはこの詩を自己解説した「構成の原理」というエ…

フェルメール『デルフトの眺望』を模写してみました

念願のフェルメールの大作『デルフトの眺望』を模写しました。もちろんほぼ原寸大で。オリジナル含め、さすがに今まで描いた油絵の中で一番時間かかりました。以下、掲載写真は、今回の模写のものです。 F50号(91×116センチ)。現物はもう6センチ高さがある…

第10回西脇市サムホール大賞で賞をいただきました

このたび、第10回西脇市サムホール大賞で、準大賞をいただかせていただきました。 詳細は、下記の大賞展のホームページ(こちら)でごらんいただければ幸いです。 廃線 15.8×22.7㎝ 油彩 皆様にお礼を申し上げます。ありがとうございます。 しかしうれしいの…

白井晟一論~再統合を暗示するアクティヴな廃墟

白井晟一論1.再統合を暗示するアクティヴな廃墟 静岡にある白井晟一の最晩年の傑作「芹澤銈介美術館」~白井自身の命名に従えば「石水館」(下図)をして、ある方がブログで『国籍不明の要塞』という表現をしていた。白井の晩年の石の建築に対しまさに言い…

カルロ・スカルパ論~ブリオン家墓地における陰陽の表現

1、建築物設計を超える建築家 私が好きな建築家は、フランク・ロイド・ライト、白井晟一、そしてイタリアのカルロ・スカルパの3人であるが、この3人はみな建築史的には主流とは言えない。特にスカルパは、建築家と呼ぶことさえやや躊躇したくなるところが…

フランク・ロイド・ライト 有機的建築とは何か

私はフランク・ロイド・ライトの建築が好きだ。なぜかといえば「かっこいい」からだ。「かっこいい」――なんという子供じみた言葉であろうか。であるが実感なのだから仕方がない。しかしライトの建築は、軍艦、飛行機、あるいは未来的宇宙ステーションの想像…

岡本太郎「傷ましき腕」論

1.傷口としての作品 もし私は世界で一点の絵画を選べといわれたら岡本太郎の「傷ましき腕」をあげる。実は岡本さんの絵は「痛ましき腕」を除いてそんなに好きではないのだが。 事実、この「傷ましき腕」一点だけが彼の絵画作品のなかでは異質なのだ。この…